理事長挨拶

健康長寿を支える老年歯科の誇りと決意

一般社団法人日本老年歯科医学会理事長
東京医科歯科大学大学院教授
水口俊介

2020~2021年度に理事長を務めさせていただく水口俊介です。このタイトルは私が大会長である第31回学術大会(学会設立30周年記念大会)のテーマですが、まさに誇りと決意をもってこの2年の任期を務めさせていただきたいと思います。

一昨年の10月に日本歯科医学会の要請により「2040年への歯科イノベーションロードマップ」を本会から提出いたしました。そこには本会の使命である「健康長寿社会への貢献」を支える3本の柱、すなわち「口腔健康管理の確立」、「地域包括システムにおける歯科」、「終末期医療への対応」があり、それらが様々な学術的知見の確立や新技術開発に立脚しており、それらの構図の実現が本会の使命である、とさせていただきました。また、理事長の抱負として学術活動のさらなる活性化、歯科保険へのアプローチ、国際交流の推進、専門医制度の推進、地域歯科医療への貢献、の5項目を上げさせていただきました。

学術活動のさらなる活性化については、本会が提案した「口腔機能低下症」に関するエビデンスをさらに整備すること、「認知症」「歯科訪問診療」など、たいへんエビデンスの作りにくいテーマについても取り組むこと、そしてそれらは学会の集約的な議論でアシストするような形で、研究計画を立案することが肝要と思われます。それには学術委員会および厚生労働省委託事業特任委員会で導入したクラウドシステム(JSG-cloud)を効果的に運用するのが良いと考えています。エビデンスの少ない状態で高齢者歯科医療、在宅歯科診療に臨むことは丸腰で戦(いくさ)をするようなものです。多くの武器をエビデンスとしてあるいはガイドライン、臨床指針として本会から発信したいと思います。

高齢者あるいはその前の年齢から口腔健康管理を実施することは医療費を削減し国民のQOL向上に有効であることはますます明白になっております。歯科保険制度の中で、もっと効果的に診療を行いそれに見合うだけの報酬を受けられる、その様な制度にしなければなりません。そのためには前述のエビデンスが必要でありますし、エビデンスの出し方も工夫しなければなりません。また、複数の委員会で共同して医療技術提案書等の準備をかなり前から実施しなければなりません。老年歯科の領域にはそのようなタネは多くあります。他学会とも協力し実現してゆきたいと考えます。

現在、歯科の専門医制度について議論が進んでおります。いまだ先が完全に見通せない状態ですが、すでに本学会の認定医・専門医制度は充実したものになっております。この本会の制度は、議論の途中ではありますが総合歯科診療専門医の中に入る可能性があります。ただ「総合歯科診療専門医」は老年歯科専門医です(といっても過言ではありません)。本会の活発な活動によって「総合歯科診療専門医」=「老年歯科診療専門医」にしてゆきたいと考えています。

本会の支部組織は1都道府県一組織で、地域によっては県歯科医師会と綿密な連携を取り、学会支部としての活動を行っています。今後高齢者歯科医療に関する様々な変革や新しい情報があると考えられます。それらを確実に伝え歯科医師会や歯科衛生士会等とともに地域の高齢者歯科医療にこれまで以上に貢献します。

日本は先進国の中でもいち早く高齢化を迎えている国です。先進国の中で、北欧諸国のようにすでに成熟した社会を眺めつつ、韓国、タイなどこれから超高齢化を迎えてしまう国々に対して適切なアドバイスができるような国でなければなりません。この8年間の間にIADR Distinguished Scientist Awardを受けた日本人は4名です。老年歯学において日本はまさにトップですし各国も日本の行動を注目しています。多くの国の研究者と協力し世界の老年歯科のレベルを上げてまいります。

上記の事項だけでなく日本老年歯科医学会が取り組まねばならないことが多くあります。みなさまのお力をお借りしこれらの仕事を達成してゆきたいと考えますので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。