理事長挨拶

日本老年歯科医学会の使命

理事長

一般社団法人日本老年歯科医学会理事長
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野
水口俊介

このたび2022~2023年度の理事長を拝命いたしました,東京医科歯科大学大学院高齢者歯科学分野の水口俊介です。前期に引き続きとなりますが,「健康長寿に貢献する老年歯科の誇りと決意」というスローガンをもって務めさせていただきたいと思います。

さて,先日久しぶりの集合型の学術大会(集合型だけでなくライブ配信,オンデマンドを併用したスーパーハイブリッドの)第33回学術大会が幕を閉じました。コロナの状況は日本各地でだいぶ良好になったとはいえ,われわれ医療関係者が完全に気を許すことはできない状況であります。さまざまな配慮をして大会をご用意いただいた大会長の小野教授および準備委員長の堀准教授をはじめ教室の方々に,そして新潟にご参集いただきました会員諸氏の方々に厚く御礼申し上げます。

会期中の3日間,さまざまなシンポジウムの議論を聞き,多くの方から直接お話を聞き,これから本会が取り組まなければならないことが,より明確になってきました。また,これまで注目はしていながら,実際に具体的な行動に移せなかった事項についても,実行への足掛かりをいただきました。やはり年に1回とはいえ,生の声を伺う貴重なチャンスです。これを活かして2年の会期を務めたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。

ただ,この2年のコロナの間に学んだことも多いと思います。31,32回の学術大会は完全Web開催となり,直接顔を合わせることはできませんでしたが,Webを介してより多くの方々に学術大会に参加いただけるようになりました。また,会員へのサービスの充実を考慮し,いつもより学会主催のセミナーを多く開催いたしました。これにもたいへん多くの方に参加していただけました。研修や情報共有の面では,非常に効果的であったと思います。まさに今は学会活動の変革期だと思います。われわれの活動が高齢者をはじめとした国民の皆様の健康に十分貢献できるように,さらに知識を得て,さらに工夫をして,そしてそれらを共有して,本会の活動を盛んにしなければなりません。

まず「口腔機能低下症」についてです。昨年末,「ワークショップ」が開催されました。この概要は電子ジャーナルに発表され,本成果に関しての議論は第33回学術大会シンポジウム1で行われました。そしてその成果である「口腔機能低下症ブラッシュアップ作戦」は,学術委員会の下のWGによって,実行に向けて議論が始まりました。また日本老年医学会,日本サルコペニア・フレイル学会とのオーラルフレイルに関する議論も,3学会で構成されたWGで始まっています。口腔機能に関する不明確な事項が固まるという時期に来ていると思います。またGerodontology のSpecial Issue も発行され,口腔機能への関心が世界に広まることを期待しています。

次に,日本歯科専門医機構が認定する広告開示可能な専門医,(仮称)総合歯科専門医についてです。現在,日本歯科専門医機構にて検討が進んでいますが,老年歯科が深く関係する,総合歯科専門医(仮称)は,本会と日本障害者歯科学会,日本有病者歯科医療学会が協議し構成するというところまで決まりました。間もなく専門医の実質的な構造の議論が始まります。総合歯科専門医(仮称)は地域に根ざしたものでなくてはなりません。これまで本会が培ってきた認定医・専門医の制度に立脚し,患者のためになる制度を創りたいと思います。

次に学会からの発出物についてです。前期は委員会の皆様のご苦労により「歯科訪問診療における感染予防策の指針」や老年歯科医学における歯科衛生士教育基準など,多くの老年歯科に関するマニュアル,指針などの文書を発出することができました。老年歯科の分野では本会が積極的に攻めないといけないものが多くあります。批判を恐れず必要なものは熟考したうえで発出する,という姿勢を貫きたいと思います。

次に,学会の広報活動についてです。現在,広報委員会のユニークかつ絶え間ないご努力によりSNSを用いた発信が盛んになっています。また,今回の学術大会でもツイキャスを使った「喋り場」が好評でした。ここでも多くの示唆が得られました。上記の学会の成果物の発信のプラットフォームをホームページとし,SNSを活用した広報活動や会員などからの意見収集活動を展開したいと思います。

次に診療報酬関連ですが,各委員会の活動は診療報酬につながっていく部分が多々あると思います。委員会間の連絡を密にして,そのようなシーズを医療技術提案書につなげていくような活動をしたいと考えていますのでよろしくお願いいたします。

本会には24の委員会があります。すべての委員会のアジェンダをここで述べることはできませんが,活発かつ協力的に活動して,本会,そして老年歯科を盛り上げることが,国民の健康長寿に貢献することにつながる,このような図式になると考えます。ぜひ会員の皆様におかれましては,本学会の活動に一層のご協力を賜りますようお願いいたします。