理事長挨拶

理事長

一般社団法人日本老年歯科医学会理事長
東京都健康長寿医療センター
歯科口腔外科/研究所自立促進と精神保健研究チーム
平野浩彦

このたび水口俊介先生(東京都医科歯科大学)の後任として、本学会の理事長を務めさせていただくことになりました東京都健康長寿医療センター平野浩彦です。任に就かせていただくにあたりご挨拶申し上げます。

私は1990年に日本大学松戸歯学部を卒業した後、東京都老人医療センター(現東京都健康長寿医療センター)歯科口腔外科渡邉郁馬部長先生(当学会初代理事長)に師事し、その後一貫して老年歯科学の診療、研究、教育を実践して参りました。また本学会では、山根源之理事長のもとでは編集委員、森戸光彦理事長、櫻井薫理事長、佐藤裕二理事長、水口俊介理事長以上4代の理事長のもとでは支部組織・地域保健医療福祉検討委員会(現支部運営委員会)委員長を務めて参りました。また本学会は日本老年学会の一分科会でありますが、日本老年学会では理事と、あり方委員会委員等も務めて参りました。

本学会は1986年に日本老年歯科医学研究会として設立され、1990年に学会へ移行しました。この年は冒頭に示しましたように私の大学卒業年であり、同年に大阪で開催された第1回学術大会に参加する機会を得ました。それ以来、様々な立場で本学会に関わって参りました。これまでの経験を活かし、以下の3つを主な取り組みとして学会運営に努めたいと考えております。

  1. 老年歯科医学の更なる醸成
  2. 高齢期歯科医療における課題への対応
  3. 以上を担う人材育成

老年学の一翼を担う老年歯科医学は、学際的で多様な視点が求められます。本学会のたゆまぬ進歩のためには、学会の活動を支えるメンバー(学会員、委員会委員、役員等)も多様な背景を持つ人材で構成する必要があると考えます。幸いにも本学会会員の構成は、多様性を持ち(歯科系大学、病院歯科、地域歯科職能団体(歯科医師会、歯科衛生士会等)の各所属割合が各々約1/3)であり、本学会の大きな強みと考えます。また、日本老年学会の分科会として他の構成6学会と連携基盤があることも特徴です。こういった特性も踏まえ、上記3つの取り組みを下記に示す活動を基盤として会員の皆様と情報共有し具体的に進めて参る所存です。

  • ① 学会運営の基盤となる会員の皆様の特性を活かした活動内容を再検討する。
  • ② 社会に向け老年歯科医学の普及・啓発を図る活動を行う。
  • ③ 高齢者の諸問題を明確に把握し、その対応に関する提言を社会に対し行う。
  • ④ 日本老年学会さらに国内の関連学会との連携強化を進める。
  • ⑤ 海外関連学会との連携を通し日本からの情報発信を含めた国際的活動を進める。
  • ⑥ 本学会員の専門性向上を促す制度環境整備(専門医制度などの整備)を行う。
  • ⑦ 以上の活動を老年歯科医学への責任学会として遂行する。

本学会は25の委員会(2023年度まで)があり、各委員会が活発に活動しており学会運営の基盤となっております。老年歯科学さらに老年学を取り巻く多岐に渡る課題に迅速かつ柔軟に対応するために、今期より委員会構成を再検討し委員会活動をより強固なものにして参ります。

本学会雑誌1巻1号(1987年)巻頭言で、渡邉郁馬先生が日本老年歯科医研究会(当時)の展望について以下のように述べています。
「老年歯科医学の展望については色々と問題点が多い。例えば老年者の全身疾患と口腔との関係、口腔の老化、老年者の抱える医学的問題、老年患者に対する補綴処置、老年患者を治療する際に必要とする技術、治療材料の開発、薬剤の基準、財政的な問題などがある。(中略)この研究会は関連領域の研究者達が一堂に会して研究成果や情報の交換を図る機会の場であるので、おおいに、活用していただきたいと思う次第である。最後にこの情報交換の場が日本のみならず世界の国々にまで広げていくことに意義がある。」
 この内容は現在の当学会のあり方の原点であり色あせないものがあります。本学会設立当初の趣旨を会員の皆様方と共有させていただき、創設から約40年を迎えた本学会が現在の超高齢社会において果たすべき役割を明確にしつつ、学会運営に携わってまいりたいと思います。

さらに、副理事長である片倉朗先生(東京歯科大学)、菊谷武先生(日本歯科大学)と密に連携を取り、活力ある学会活動を行ってまいりたいと思いますので、皆様のご支援を賜れますよう、お願い申し上げます。