人を対象とした医学研究の倫理審査と倫理研修について

2018年1月25日

研究倫理とは

人を対象にした医学研究を行う際は、研究者自身が1年以内に倫理研修を受講していることと、研究計画、患者への説明文書などがしかるべき機関の倫理審査を受け、承認されることが必要になります。大学や大きな病院には倫理研修と倫理審査委員会がありますが、そういったところに所属していない会員のために社団法人日本老年歯科医学会では倫理委員会による倫理研修と倫理審査委員会による倫理審査を行っております。

研究倫理の啓発

倫理審査が必要な研究とは

倫理審査の基本となっているのは厚生労働省と文部科学省の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」です。これは各省のホームページでご覧になれます。では、人を対象とする医学系研究とは何かということになりますが、これについては「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針ガイダンス(平成29年3月改訂)」に解説があります。以下にその一部を紹介します。

「人を対象とする医学系研究」とは

人(試料・情報を含む。)を対象として、傷病の成因(健康に関する様々な事象の頻度及び分布並びにそれらに影響を与える要因を含む。)及び病態の理解並びに傷病の予防方法並びに医療における診断方法及び治療方法の改善又は有効性の検証を通じて、国民の健康の保持増進又は患者の傷病からの回復若しくは生活の質の向上に資する知識を得ることを目的として実施される活動をいう。

  1. 侵襲を伴わず、かつ介入を行わずに研究対象者から新たに取得した試料・情報を用いる研究や、既存試料・情報を用いる研究も「人を対象とする」研究に該当する。
  2. 人体から分離した細菌、カビ、ウイルス等の微生物の分析等を行うのみで、人の健康に関する事象を研究の対象としない場合は、「人を対象とする」研究に該当しないものと判断してよい。ただし、患者から分離した病原微生物等の分析・調査から得られた情報を用いて、他の診療情報を組み合わせて、感染症の成因や病態の理解等を通じて国民の健康の保持増進又は患者の感染症からの回復等に資する知識を得ることを目的として実施される場合には、「研究」に該当する。
  3. 「健康に関する様々な事象の頻度及び分布」とは、疫学的手法を通じて得られる種々の保健指標、例えば、ある種の疾患の発生頻度、地域分布、性・年齢分布や改善率、生存率、有病率、健康余命、平均余命等を指す。また、「それらに影響を与える要因」としては、個人における喫煙、食事、運動、睡眠等の生活習慣、個々の医療における診療内容のほか、地域における環境的な要因、社会的な要因などが挙げられる。人を対象として、特定の食品・栄養成分の摂取がその健康に与える影響を調べる場合は、「研究」に該当する。

「人を対象とする医学系研究」に該当しない研究とは

傷病の予防、診断又は治療を専ら目的とする医療は、この指針でいう「研究」に該当しない。医療従事者が、そうした医療で自ら行ったものにおける患者の転帰や予後等について、研究目的でない医療の一環とみなすことができる場合には、この指針でいう「研究」に該当しないものと判断してよい。以下にその例を示す。

  1. 以後の医療における参考とするため、診療録を見返し、又は退院患者をフォローアップする等して検討する
  2. 他の医療従事者への情報共有を図るため、所属する機関内の症例検討会、機関外の医療従事者同士の勉強会や関係学会、医療従事者向け専門誌等で個別の症例を報告する(いわゆる症例報告
  3. 既存の医学的知見等について患者その他一般の理解の普及を図るため、出版物・広報物等に掲載する
  4. 医療機関として、自らの施設における医療評価のため、一定期間内の診療実績(受診者数、処置数、治療成績等)を集計し、所属する医療従事者等に供覧し、又は事業報告等に掲載する
  5. 自らの施設において提供される医療の質の確保(標準的な診療が提供されていることの確認、院内感染や医療事故の防止、検査の精度管理等)のため、施設内のデータを集積・検討する

「該当しない研究 2.」に「いわゆる症例報告」とありますが、症例報告でも以下の場合は、倫理審査が必要です。

  1. 研究的侵襲が発生
  2. 研究目的の採血・検査・撮影が行われる
  3. 個人が同定される可能性が高い(稀少疾患の患者や、報道等で病院、個人名の予想がつくなど)
  4. ヒトゲノム・遺伝子解析が含まれている報告
  5. 研究者が必要と思う場合(学会・研究会・発行元からの倫理審査委員会による審査要求を含む)

倫理審査の該当の是非ついて、ご判断が難しい場合は事務局にお問い合わせください。

倫理研修について

研究を始める時、過去1年以内に倫理研修の受講が必要です。また、研究中も継続して1年ごとに受講が必要です。なお、研究責任者の他に、研究を実施する全ての研究者にも倫理研修が必要になります。倫理研修はいろいろなところで行われており、主催者は問いませんが、受講された場合は受講証明等を保管していただき、倫理審査申請の際はこれを提出していただく必要があります。

本会ではE-ラーニングにより倫理研修を実施しております。会員本人には無料ですので、是非ご活用ください。

倫理研修 受講受付

倫理審査申請について

倫理審査の申請を行う場合、「倫理申請の手引き」および「申請書類作成例」をご参考に、以下の申請書類をダウンロードして作成してください。

また、介入研究の場合は、被験者の補償のために保健に加入する必要等があり、ご不明の場合は事務局にご相談ください。

申請書類

後ろ向き研究(既存の情報のみを用いる研究)

前向き研究(新たな試料・情報を得る研究)

申請書類作成例

後ろ向き研究(既存の情報のみを用いる研究)

前向き研究(新たな試料・情報を得る研究)

参考:一般社団法人日本老年歯科医学会

以上につき、ご不明な点は事務局までお問い合わせください。